インディー(130)

「オカチャンて韓国人なん?」
とナオミ

「なんで?」

「顔が韓国人っぽいから」

「良く言われるけど日本人」

「そう」

「もし韓国人だったら?」

「キャー!このストラップかわゆい!」
と突然叫ぶトモコ

雑貨屋の前に飾られたばかでかいぼんぼりのついたピンクのストラップを手にしている。
「500円よ。ヌォホホホッ!」
トモコは、買ってさっそく携帯につけた。

ぼんぼりがでか過ぎて携帯が隠れてしまう。


ナオミが変な看板を見つけた。

「オカチャン、コブクロってなに?」

「牛の子宮や」

「あぁ、そういうこと!」

「ホルモン専門店やろ」

「あたし、今度から子宮が痛いときは、『今日は、コブクロが痛むわー』って言おうっと」

「ハハハッ」

なんでも、遊びにしてしまう。
生ゼンマイは知っていたが、コブクロは未体験のようだった。店に入ったらオーダーするに違いない。


お目当ての焼き肉屋

さすがに2時過ぎという中途半端な時間帯のせいで、閑散としていた。

にぎやかな二人には、ちょうど良かった。


「飲み物は?」

「サイダー!」
「あたしも!」

「それじゃ、ビール生とサイダー二つ」

「適当に頼んでいい?」

「あたしは、生ゼンマイとコブクロ!」
とナオミ

「あたしは生レバーとユッケ!」
とトモコ

「あいにくコブクロは切らしております」
と店員さん。


「それじゃ、焼き肉は適当にオレが頼むね!」


「なあ、オカチャン、今度、コブクロ食べに連れて行ってなぁ」
と甘えるナオミ

「あたしも、あたしもー」
とトモコ

ビールとサイダーで乾杯したあと、突然トモコが、履いていた靴下を脱いでナオミの鼻先に突き出した。

顔をそむけるナオミ


なんなんだ、なんなんだー


トモコは、サッと靴下を丸めてスカートのサイドポケットに押し込んだ。

そして、ナオミと視線を合わせて例の
「ヌェ!」

なんなんだー!

私がオーダーしたタンをトモコが箸で奪い去って行く。

内心、よくもこんな怪獣みたいなやつとナオミは付き合っているなあと、あきれ返る。


ようやく腹が落ち着いて来たのか、二人のペースが遅くなった。

大きなステンレス皿の上には、まだカルビやミノが大量に残っている。

「あの、フリペのことだけど・」
と私から切り出す。

「ハイ!」
と、突然、真顔になるトモコ。(根は、マジメ人間のようだった。)



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